レイシャルメモリー 2-07


 門が見えてきた。勤務形態が変わっていなければ、自分の隊だった兵士が出てくるはずだ。はたして、飛び出してきたのはアジルだった。剣を抜けずに立ち止まった兵士の前に、アジルが立ちはだかる。
「通して欲しい。彼らを帰したいんだ」
 フォースは兵士の前に出ながらアジルに声をかけた。アジルは一瞬目を見開くと、疑うように目を細める。
「納得できる理由を言ってください。だいたい、あなたは誰です? 変わっていないと誰が」
「後からいくらでも説明する、ブラッドが斬られてるんだ!」
 最後まで聞かずにフォースが言った言葉に、アジルは目を見張った。
「なんですって?!」
「斬られていることに気付けなかったんだ。頼む、早く手当てしないと」
 必死になっているフォースに、アジルはうなずいて見せ、いったん詰め所に引っ込んだ。
「レイクス様、イージスともう一人、足りません」
「えっ?! なんで……」
 兵士を見回すと、ザッと見て六人だ。一人がハッとしたように手を叩く。
「上でシャイア神に!」
「そうだ。じゃあイージスは?」
「途中までは俺の後ろを走っていた」
 見張りをしていた奴が、そう口にする。迷うような道のりではなかった。だとしたら、何か目的があって離れたのか。
「とにかくルジェナに戻ってくれ。イージスともう一人は、俺が後から返す」
 重たい門扉が動き出した。人が通れるだけ開くと、次々と通り抜けていく。
「それと、くれぐれも親書のことは内密に頼む」
「御意」
 最後の一人がフォースに敬礼を向け、門扉の向こうに消えた。フォースは詰め所に首を突っ込む。
「アジル、ブラッドを!」
「小屋に馬がいます」
 扉を閉める操作をしながら、アジルは小屋の方向を指差した。フォースは急いで馬を二頭引いて出た。駆け寄ってくるアジルに、フォースは馬にまたがりながら声を張り上げる。
「防壁内側の道、ここから北なんだ」
「了解」
 フォースはアジルが馬に乗るのを待たずに、馬を進ませた。
 まるで目印のように、荷物が道の真ん中に積んである。フォースは荷物の手前まで行くと、馬から飛び降りた。ブラッドが座り込んでいた場所まで行ったが、本人が見あたらない。代わりに血溜まりがあるだけだ。
「どこにいるんです? これは……」
 アジルはフォースの横に立って血溜まりに目をとめ、慌ててフォースに視線を向けた。
「隊長?」
「一体、どこに……」
 そうつぶやきながら、フォースはこの場所以外のどこも考えられなかった。

2-08へ


前ページ 章目次 シリーズ目次 TOP