レイシャルメモリー 3-04


「いいえ、レイクス様がライザナルへお戻りになるまで護衛に付かせていただきます」
 イージスの言葉に、グレイは目を丸くしている。フォースは大きくため息をついた。
「まったく。リディア拉致の実行責任者が、なに言ってんだ」
「ええっ?! あ……」
 階段から下りてきたサーディが途中で立ち止まり、口を大きく開けたままイージスを指差す。その後ろに付いてきていたスティアが、サーディを追い抜いて駆け下りてきた。
「フォース、無事でよかった!」
 そのまま駆け寄ってきたスティアが、気を取り直したサーディが下りてくる階段の上を指差す。
「リディア、今ルーフィス様と話してるわ。ルーフィス様、怒ってるわよ」
「そりゃそうだろうな。でも、きちんと説明して分かってもらうほかない」
 いくらか頬を緩めた顔で言ったフォースを見てホッとしたのか、スティアは力のない笑みを見せた。
「フォース」
 少し離れたところにいるサーディに、控え目な声で呼ばれる。フォースが笑みを向けると、サーディは少しうつむいてからもう一度視線を合わせてきた。
「無事でよかった」
 そう言った声に陰を感じ、フォースはサーディの方へと足を踏み出した。
「何かあったのか?」
「え? い、いや、何も」
 サーディは慌ててフォースに手のひらを向け、左右に振る。
 その時、階段の上に琥珀色の髪がなびいて見えた。
「フォース!」
 リディアが階段を駆け下りてくる。フォースは階段の下まで行くと、下りてきたリディアを思い切り抱きしめた。
「リディア、逢いたかった。やっと逢えた」
「フォース……」
 リディアの声が震えている。フォースはリディアの頬に触れ、つたい落ちてくる涙に気付いて指で拭った。
「私、もう泣き虫じゃないの。ホントよ?」
 そう言いながら見上げてくるリディアの瞳から、次々と涙が溢れてくる。
 親書を預かった時のリディアは、とてもしっかりした様子だった。今は泣いているが、その言葉は嘘には聞こえない。
「ああ。分かってる」
 そしてその涙は、自分といる時のリディアが少しも変わっていないと教えてくれる。フォースは触れていたその頬とまぶたに、そっとキスした。
「凄く明確な差別だよな」
 その声にハッとして振り向くと、グレイがじっとこちらを凝視していた。スティアは嬉しそうな顔で半分涙目で見つめ、イージスは見て見ぬ振りなのか視線が定まっていない。サーディは硬直したような青い顔をしている。
「ご、ゴメン。つい」

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