レイシャルメモリー 3-05


 フォースが言葉に詰まりそうになる息を飲み込んで謝ると、サーディは慌てたように手の平を向けた。
「い、いや、そうじゃなくて。俺も、シャイア神が拒絶したらと思ったらゾッとして」
「拒絶?」
 フォースの問いに、グレイは真顔を向けてくる。
「だからシャイア様さ。相手がフォースならキスしても白い光が飛ばないなんて。他の男なら落雷ものだと思う」
 白い光と聞いて、フォースはイージスがリディアを拉致しようとした時の白い火花を思い出し、リディアの顔をのぞき込んだ。リディアは苦笑を向けてくる。
「男の人だと全然駄目だし、女の人でも触れるのを拒否することがあるの。シャイア様に悪意を持っていそうな人にも火花が出るし」
 フォースは思わずリディアに触れていた手のひらを見た。
「平気だよ? 何もない」
「フォースだもの」
 リディアは疑ってもいなかったのだろう、事も無げにそう言って言葉をつなぐ。
「逢うのは話を聞いてからだってルーフィス様はおっしゃったんだけど、いいか悪いかなんてシャイア様が判断しますって出てきちゃったの」
 その言葉を聞いて、フォースはルーフィスがいるという階上を見上げた。ルーフィスは護衛という立場だが、フォースを見張っているわけでもない。信頼してくれているのか、それともシャイア神をこそ信頼しているのか。
「いつからなんだ? どうしてそんな」
「どうしてって、俺らにシャイア神の気持ちなんて分かるわけがないだろうが」
 グレイはフォースがリディアにかけた問いに即答すると、ククッとノドの奥で笑い声をたてて舌を出す。
「それにしても、一番危ない奴を許してちゃ世話無いよな」
 グレイが同意を求めたのか、振り返った先、サーディは、肩をすくめて苦笑した。
「シャイア神はフォースの機嫌を損ねるようなことはできないだろう。とにかく行動して欲しいって立場なんだろうし」
 サーディの言葉に、グレイは思い切り大きくうなずいて見せる。
「エサ、だな」
「また微妙な表現を」
 フォースはため息と共に言うと、リディアと視線を合わせて苦笑を交わす。
「フォースには食いもんだろうが」
 そう言い切ったグレイの頭を、サーディがベシッと叩いた。
「神官の言葉じゃない」
「いやいや。でも、エサがいいと釣れるモノもでかいよな」
 ノドの奥で笑い声をたてているグレイを横目で見て、フォースはスティアに視線を向ける。
「そうそう、レクタード。元気にしてるよ。あの親書は、レクタードと皇女の婚礼をって話しにも言及してる」

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