レイシャルメモリー 2-09
だがすでに遅い。出血が多いのか、急激に意識が遠のいていく。すべて終わりか。ジェイストークは、そう口にしたかどうかすら分からないまま、意識を失った。
***
反目の岩を通り過ぎ、深い森に獣道という状況で、ティオはリディアを肩に乗せ、その上荷物まですべてかついで歩いている。
「ファル、マクラーンに着いたかな。手紙、渡せたかな」
「いくらなんでも早過ぎだ」
後ろからついてきているだろうティオに、フォースはそう言葉を返した。
ヴァレスを出てから三人は、まっすぐディーヴァの山沿いを目指していた。ほんの少し雑草が左右に割れた状態だとはいえ、これをさすがに道とは言いがたいし、楽に歩けるわけもない。
だがティオにとっては、木々や下草が茂っていることは、あまり気にならないようだった。リディアが枝に当たらないよう、スルスルと木々の間を上手くすり抜けてくる。
「ねぇ、フォース?」
いつもよりもいくらか控え目な声がして、フォースはリディアの姿を振り返って確認した。
「なに?」
「……、あ、あの、ブラッドさん。とても元気になっていて良かったわね」
一瞬だが言い淀んだことに、フォースは足を止め、どうしたのかとリディアに顔を向ける。
「そうだな。一時はどうなることかと思った」
フォースがそう笑みを返すと、リディアは笑顔を作り、口をつぐんだ。フォースはまた前を向いて歩き出す。
「ね、フォース?」
今度はティオの声だ。リディアの真似をしているのか、さっきの声より抑揚を押さえている。
「なんだ」
ぶっきらぼうに返したフォースに、ティオは少し迷ったような顔をして、それから口を開いた。
「リディアがね、フォースに聞きたいことがあるんだって」
「ええっ? そんなこと言っちゃ、あ」
リディアが慌てたような早口で、ティオの言葉をさえぎった。フォースは立ち止まると、ティオの足元まで戻ってその肩に座っているリディアを見上げる。
「さっきから何か言いたそうだとは思ってたけど。どうしたんだ?」
フォースがリディアを見上げているのを見て取ると、ティオはリディアをフォースの側に降ろし、みるみるうちに小さな子供の姿に戻る。
「フォース、俺が聞いた時の返事とリディアが聞いた時の返事が違いすぎるよ」
「同じになるわけがないだろうが」
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