レイシャルメモリー 1-02
「最近、アレが多く目撃されているのだよ。国で報酬を出して狩らせている。一体どこから現れるモノだか……」
本当にマクヴァルがやっていることならば、狩られても支障がないほどの数を用意しているのか、それともあわよくばと思っているのか。
神に反応するという言葉も気になる。神の力に対しても反応するのならば、塔にいるはずのフォースを心配して見せた方がいい。
「レイクス様は、ご無事で……」
「それはお前の方が知っているだろう。私はずっと部外者のままだ」
その返事は、様子を把握できないことへの嫌味か、それとも塔にいないことに気付いているからか。心臓の鼓動と同調して疼く痛みで、注意力が散漫になっている。確かめようにもこちらがシッポを出しそうで、なかなか頭が回らない。ジェイストークは目を閉じてゆっくりと息をついた。
「感謝している」
マクヴァルの不意の言葉に、ジェイストークは眉を寄せて薄く目を開いた。のぞき込んでくるその顔が、マクヴァルの人格ではなく、懐かしい父の顔に見える。
「お前が助けてくれるとは。嬉しかった」
それはただの主観で感謝ではない。だから反応する必要はないとジェイストークは自分に言い聞かせた。だが、失われてしまった父の人格が戻っているのではと、どうしても期待してしまう。
「怪我をさせてしまって心配したよ」
怪我をさせたという言い方は、あの妖精の存在がマクヴァルのせいだとも取れる。考え過ぎか。妖精が現れた場所にいたことで無理をさせたと思っているだけかもしれない。
だが、そもそもどうしてあの場所にいたのか。エレンの墓に祈りを捧げることになっている時間以外は用が無いはずだ。しかも祈りを捧げていたわけでもなく、どこから現れたのかも分からない。階段から下りてきたなら、階段を上がれば逃げられた。それができなかったのは、すでに地下にいたということだ。
「どうした?」
考え込んでしまったからか、マクヴァルが心配げに顔をのぞき込んでくる。色々聞き出したいが、逆に自分が余計なことを話してしまう可能性もある。
「いえ。あなたが無事でよかったです」
マクヴァルに何かあってはいけないのだ。戦士の手で斬られなくてはならないのだから。ジェイストークは焦燥感の中、それだけは間違いないと思った。
ドアにノックの音がした。
「陛下がお越しになりました」
部屋の外から聞こえたその声は、待っていろと言い捨てていった神官のモノだ。その神官が呼びに行ったのは、マクヴァルだったのか、クロフォードだったのか。普段なら足音も聞き分けていただろうことに、ジェイストークは苛立ちを感じていた。
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