レイシャルメモリー 1-03


 マクヴァルは自分でドアを開けに行った。開いたドアの向こうで、クロフォードがマクヴァルに視線を向ける。
「来ていたのか」
「はい。お邪魔でしたら、席を外しますが」
「いや。そなたは親なのだから、側にいたくて当然だろう」
 クロフォードの言葉にマクヴァルは、ありがとうございます、と深く頭を下げる。ジェイストークはそのクロフォードが言い切った言葉の中に、フォースと会えない寂しさを感じた。
「快方へ向かってくれているようで、よかった。レイクスも心配している」
 嘘だと分かっているその言葉にも、ジェイストークにはクロフォードの優しさが見えた。思わず笑みを漏らし、ふと思いついた不安に眉をひそめる。
「レイクス様のお世話は……」
「現在はナルエスが就いている。安心していい、彼はほとんど付き切りだよ」
 実際フォース本人はいないのだが、肩の荷が下りたと同時に、ひどく寂しい気もした。大きく息をついてクロフォードを見上げると、眉を寄せて難しい顔つきをしている。
「陛下……?」
 ジェイストークが声をかけると、クロフォードは苦悶を抱えた苦笑を見せた。
「しかし、数が増えてきているとはいえ、なぜエレンの墓に怪物など。どこから入ってきたのだ」
 静かな調子でそう言うと、クロフォードは視線をマクヴァルに向ける。
「私も一体どういうことなのだか。調べさせましたが、入ってきた形跡や異変は何一つありませんでしたし」
 クロフォードは少し間を置いて、ため息を一つついた。
「防ぎようがないということか。ならば、軍部から監視にあたる人員を数名借りてくればよかろう」
「いえ、すでに見張りの神官を増やしております。何かありましたらすぐにでも御連絡申し上げますゆえ」
 マクヴァルはかしこまって辞退した。ジェイストークの目に映ったその顔は、硬く強張ったように見える。クロフォードはマクヴァルの言葉に、うむ、と大きくうなずいた。
「それで足りるのなら、そうしてくれ。どこも警備を厚くしなければならん。人手不足だ」
 その言葉にマクヴァルは、はい、と頭を下げた。クロフォードは眉を寄せ目を細める。
「しかし城自体の警備が厚いはずなのだが、一体どこから神殿奥にまで入り込んだのだろうな。城のどこかにヴェーナと繋がる道があるのかもしれん」
「まさかそのような……」
 どれだけ驚いたのか、マクヴァルは顔色を変えたが、すぐに難しげな顔に戻る。
「いえ、神殿もすぐに調べさせます。これ以上何か起こるようではいけません」

1-04へ


前ページ 章目次 シリーズ目次 TOP