嘘の中の真実 2-1


 小さく声が漏れたのを聞いて、フォースは背にしていたベッドに向き直り、寝ているヴェルナの顔をのぞいた。悲しい夢でも見ているのか、寝顔が歪む。この人も、きっと寂しい気持ちを抱えているのだろうとフォースは思った。
 昨晩自分が抱いたのは確かにヴェルナだ。でも、ヴェルナにとっては、嘘だと分かっていて、それでも愛されていると信じてしまった時の、その人の代わりだったのかもしれない。
 それとも、自分で言った言葉を実践して、本気で愛して欲しいと思ってくれたのだろうか。
 フォースは、ヴェルナの閉じられた瞳からこぼれてくる涙をそっと拭った。亜麻色の髪を何度か撫でると、ベッドに沈み込むように身体から力が抜けていく。ヴェルナがゆっくりを目を開いた。
「あ……。居て、くれたの?」
 悪い夢の中から抜け出せないでいるようなその顔に、フォースは微笑んで見せた。ヴェルナの瞳が訝しげに細まる。
「昨日の人、よね?」
「え? 覚えてないのか?」
 眉を寄せて寂しげな表情になったフォースに、ヴェルナは慌てて首を横に振った。
「覚えてないわけないでしょう? ただ、どうしてかしら。昨日は同い年くらいだと思ってたから」
「今日は違って見える?」
 フォースの問いに、ヴェルナは視線を合わせたまま、小さく三度うなずいた。身体を覆っている薄い布団から腕を出し、フォースの頬に触れる。
「でも、くつろいでくれているのなら嬉しいわ」
 フォースに笑みを向けると、ヴェルナは半身を起こした。夜具からこぼれそうになる胸を慌てて隠す。
「向こうを向いてて」
 フォースはうなずくと部屋の隅に行き、棚にある小さな肖像に目をやった。両親なのか、ヴェルナに似た男性と、優しい表情で寄り添う女性が描かれている。服を着る衣擦れの音が、フォースの背中から耳に届く。
「随分優しく抱く人ね。私があんな風に誘ったから、自分勝手に無茶苦茶されるかと思った」

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