嘘の中の真実 2-2
ヴェルナの笑みを含んだ言葉に、フォースは苦笑した。
「壊しそうで怖い」
「女なんて、そうそう壊れやしないわよ」
クスクスとヴェルナが笑う声が近づいてきた。フォースの耳元で、もういいわ、とささやくと、ヴェルナは側にある木でできた窓を大きく開ける。
部屋いっぱいに朝の光が差し込んできた。フォースはまぶしさに顔を歪め、それからゆっくりと目を開く。ヴェルナは、朝日を映して紺色に輝く瞳を間近にし、目を丸くした。
「その色?! もしかして首位騎士の息子のフォース? 上位騎士になったばっかりで、十六歳? 十六歳っ?! 七つも下、……詐欺だわ」
フォースは顔を片手で覆い、ため息をつく。
「詐欺って。いくつだと思ってたんだよ。ってか、歳まで知ってんだ」
ヴェルナは呆れて笑ったのか、ため息なのか、短くハッと息を吐き出した。
「誰だって歳くらい知ってるわよ。その目の色、どうやったって誤魔化せないでしょう? どうする気だったのよ」
「誤魔化す? 何を?」
なんの話かと、フォースはヴェルナの顔をのぞき込む。
「サッサと起きて逃げようって思ってたんじゃないの?」
「……、居るだろ?」
ヴェルナは、訝しげなフォースの表情に嘘はないかと、正面から見据えた。
「責任取れとか結婚しろとか、無茶苦茶言われるかもしれないのよ?」
「それ、無茶苦茶なのか?」
真面目な視線を返すフォースに背を向け、ヴェルナは身体中の空気を全部吐き出すかのような大きなため息をつく。
「浅ましいわ。今、頭の中を玉の輿って言葉が横切っていったわよ」
その言葉に、フォースは笑みを浮かべた。ヴェルナはアッと声を上げて口を押さえると、その声にどぎまぎしているフォースに向き直る。
「ごめん。食べるものがないの。買い物、付き合ってくれる?」