嘘の中の真実 4-2


 フォースはヴェルナを引き留めることができず、ただ後ろ姿を見送った。喪失感が心を支配していく。それでも、追いかけようと足を踏み出すことはできなかった。
 後ろから腕を取られる。我に返って振り返ると、バックスが居た。とたんにヴェルナと過ごした一日が、まるで夢だったかのように感じる。
「今のヴェルナ? 何してたんだ? フォースも知り合いか?」
 バックスの問いに、フォースは苦笑した。
「みたいなモノ。フラれたて」
 今までフォースがバックスに恋愛関係の話など振ったことがなかったせいか、バックスは異様に驚いた顔になる。
「はぁ? 私は玉の輿に乗るの、とか言っておいてフォースをフッたのか? サッサと上位騎士だって言えばよかったのに」
 その言葉で、玉の輿を浅ましいと言っていたヴェルナが、フォースの脳裏を横切った。
「言わなくても、この目のおかげで名前までバレたのに」
「あ、そ、そうなんだ?」
 バックスは、どうしたらいいのかわからないといった体で、頭を掻いている。フォースは微かな自嘲を浮かべた。
「落ち込みそうだ」
「でも、それにしては、ホッとしたような顔してるじゃないか」
 バックスの言う通り、確かに僅かだが安堵の気持ちも自分の中に存在しているのが感じられる。そう、リディアを守っているのだという気持ちを、まだ持っていていいのだと思うと、なんだか妙なくらい安心できる。
 ヴェルナの気持ちは、本当に嘘だったのだろうか。自分もヴェルナを抱いたから愛情を持っていると思ったのかもしれない。でもその気持ちのことだけを考えると、フォースにはどうしても嘘だったとは思えなかった。
 言わせてもらえなかった言葉は、まだフォースの中で消えずに木霊していた。

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