この地球の美しさといったら! 03


 だが様々な勉強をした今は、カプセルの中身が遺体ではないことくらい自然に理解できている。
 使われずに古くなったドアは、それでもシュンと小気味よい音を立てて道を空けた。縦に長い部屋の中央、二列に整然と並んでいる冷凍睡眠のカプセルが、視界に飛び込んでくる。
 シュウの予想通り、昔見た時の恐怖感はわき上がってこなかった。というよりも、どんな感情が浮かぶことも無かった。カプセルはただカプセルとして横たわり、内包されている人間は命のない人形に見えた。
 シュウは止まっていた足を前に踏み出し、カプセル上部から見える個々の顔をのぞき込んだ。
 老人、中年の男、中年の女。次に見た女の子のところで、つま先側にあるプレートに気付いた。No.4・3・学生・7歳、とある。シュウは、前の3人は何とあっただろうかと戻って確認した。
 No.1・1・消化器科医師・70歳。
 No.2・1・調理機器整備技師・34歳。
 No.3・2・調理師・30歳。
 職業は必要な時に起こすためかもしれないと想像がついた。だが、通しナンバーらしい数字の次、2番目の数字が分からない。シュウは謎を抱えたまま、プレートと顔を確認しながら再び歩を進めた。
 No.5・1・教員・31歳、男。
 No.6・2・トリマー・24歳、女。
 No.7・1・消防士・38歳、男。
 No.8・2・無職・39歳、女。
 No.9・1・アートディレクター・55歳、男。
 No.10・1・執事・49歳、男。
 No.11・2・家政婦・41歳、女。
 No.12・3・学生・13歳。男。
 No.13・1・情報処理学生・21歳、男。
 そこまできてシュウは、家族が分かるように番号を振っているのかもしれないと考え付いた。数字が1に戻ったところから一番大きい数字までが一つの家族なのだと思う。
 だがシュウは、家族というものがよく分からなかった。自分が生まれて1年ほどで母親が亡くなったという記録があった。唯一記憶に残る家族である父親も、シュウが4歳の頃に亡くなっている。

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