この地球の美しさといったら! 04
時を止めた彼らとシュウの家族は、どちらが幸せだっただろうとシュウは思考を巡らせた。
厳しい環境で命を落としていった眠らなかった人たちと、地球で生きることを今もまだ夢見続けている人たち。シュウが生き残っていなかったら、夢は夢だけで終わってしまう。そんなことすら知るよしもなく。
だが、これから地上に降りて安穏とした生活が送れるとも限らない。厳しい自然環境が待ち構えている。それでも宇宙での生活を知らないだけ、カプセルの中の方が幸せだったのではないだろうか。
そんなことをボーっと考えながら、シュウは二番目の数字を確認しつつ部屋の奥へと移動していった。
不意にシュウの足が止まった。部屋の一番奥にあるカプセルに目が釘付けになって動かせない。明らかに他とは違う感情が溢れてきた。
今まで見てきた数々の画像を含め、ここまで綺麗な女性を見るのは初めてだった。色白の肌はまるで血が通っているように赤みが差し、金糸のような髪はカプセル内の青白い光さえ柔らかく反射している。今すぐに起き上がっても不思議ではないほど生き生きとしているのだ。
興味を持ったシュウは、カプセルを回り込んでプレートをのぞき込んだ。
――イブ、アダムと共に――
通しナンバーも無く職業も無く、ただ芝居の台詞のような一言が書いてある。内容からして、イブとアダムが人の名前だろうということは想像がつく。その名をどこかで聞いたような気はするが、それが誰なのかは分からない。
ふと隣のカプセルに目が行った。そこにはNo.50の数字がふってある。発作的にもう一列を振り返ってカプセルを確認した。綺麗に並んでいる。もう一列も51台のカプセルがあるということは、全部で102台ということになる。
船内人口は搭乗の際から完全に把握されていたし、搭乗人員は200人と記録にも残っていた。冷凍睡眠の装置を増やせたとしても、黙って人間が増えるということは無いはずだった。
記録の不確実さがシュウを苦しめた。人口の記録すら不確かなのだ、降りるための手順も間違えているかもしれない。