この地球の美しさといったら! 07
無意識に早くなったシュウの足がコードを直撃し、一瞬フラッシュのような光が辺りを包んだ。つんのめって転んだシュウは、頭をもたげてアダムのカプセルを振り返った。ちぎれたコードがヘビの抜け殻のように落ちている。
立ち上がって中をのぞいた。アダムは身体をけいれんさせていた。カプセルのどこかがショートしているのかパチパチと音を立て、その音が静まると同時にアダムも動きを止めた。
彼女の無事を確かめていなかったことにハッとし、シュウは慌ててイブのカプセルに駆け寄った。変わらぬ美しさでそこにいた彼女に、ホッと胸をなで下ろす。
後は宇宙船を無事に着陸させるだけだ。そうすれば101個のカプセルが人間を起こしてくれる。新しいカプセル故、一番最初に起きるだろう彼女を連れて、真っ先に彼女と地上に降りればいいのだ。地表の分析をするためとでも理由を付ければ完璧だ。
シュウは喜色満面、冷凍睡眠室からコックピットへと急いだ。
地鳴りのような音を立て、宇宙船の動力が冷凍睡眠室へと行き先を変えた。円形の窓の外には砂地と水平線が見える。反対側の窓を見やったシュウの目に、木々の葉が揺れているのが映った。
無事に降り立ったのだ。やり遂げたという満足感に、シュウは声を立てて笑った。そのまぶたに彼女の美しい姿が浮かぶ。アダムの反応が早かったということは、彼女もすぐに起きるだろう。シュウは早々に冷凍睡眠室へと向かった。
起き上がるところを見られるかと思っていたが、回復はシュウの予想以上に早かったようだ。真っ直ぐな廊下の中程まで進んだ辺りで、彼女が部屋から出てきたのが見えた。
すでに宇宙船に積んであった普段着を着込んでいるが、長い金髪は柔らかく空気と戯れ、地平線の海のような色の瞳は、真円のカポーションに磨かれた宝石のように輝いている。
ただその表情は暗かった。アダムという家族を失ったのだから仕方がないが、いつか笑みで溢れさせてやるとシュウは思った。彼女はシュウを認めると、冷たい表情のまま一礼した。
「もう動けるんだ?」
勇気をふるってかけた声に彼女は、はい、と短く答えた。